核医学診療施設における濃度限度等の評価に関するガイドライン
1.ガイドラインの目的
核医学診療は、疾病の患部に対して親和性の高い放射性医薬品を用いて、患者に苦痛を伴わない機能診断又は放射線治療を行う重要な診療手法である。特に、RI内用療法は、甲状腺がん・機能亢進症の治療(Na131I)、有痛性骨転移疼痛緩和(89SrCl2)及び低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫(90Y-抗CD抗体)の治療に適用され、ピンポイント治療法として高い治療効果を発揮している。最近、ホルモン抵抗性前立腺がんの骨転移治療に対し、放射性塩化ラジウム(223RaCl2)がその延命効果により医薬品として承認され、臨床使用されようとしている。また、ラジウム-223の他、177Luや213Biなど新しい核種の臨床応用も進められつつある。このように、分子標的手法への幅広い診療分野に利用される核医学診療は、「医療イノベーション5カ年戦略」に沿った先進的医療である。
今般、核医学診療関係学会において、新しい核種による臨床使用を鑑み、核医学施設における管理に必要な基礎資料等の提供と放射線施設の安全管理を図るための安全ガイドラインを作成した。当該核医学診療の実施に当たって、このカイドラインを参考にして放射線の安全管理及び医療安全の確保に寄与することを目的とする。
2.ガイドラインの概要
本ガイドラインの構成は、核医学検査及び治療を実施するに当たり、病院等が医療法施行規則第第24条第8号又は第28条第1項に基づく届出書に伴い添付する“診療放射性同位元素使用施設のしゃへい線量等に関する基準の適合性に係る算定評価の書面”のモデルをもってガイドラインとする。
当該ガイドラインの要点を以下に列挙する。
1)放射線障害の防止に関する予防措置は、“医療法施行規則の一部を改正する省令の施行にいて(平成13年3月12月 医薬発第188号通知)”に準拠することを原則とする。
2)診療用放射性同位元素使用室等に係る濃度限度等の評価について
① 治療用診療用放射性同位元素の使用に関しては、投与の間隔及び頒布期間を考慮して一定間隔での使用条件を考慮して評価する。なお、この評価を適用する核種については、当面、89Sr 、90Y、131I及び223Raを用いるRI内用療法に限定すること。
② 当該RI内用療法適用核種の空気中放射性同位元素の濃度及び、排水中の放射性同位元素の濃度の評価に当たって、90Y、131I及び223Raの使用条件は1週間毎、89Srは30日毎の使用として構造設備に係る能力評価を行うこととする。また、この適用に係る使用日数は、排水濃度算定評価におけるt1の使用日数を当てることとする。
③ 223Raの使用に係る濃度限度等の算定評価に当たっての実効線量率定数はアイソトープ手帳(改訂11版)、日本アイソトープ協会(2012)の値を用いた。鉛、鉄、コンクリートによる実効線量透過率は、平成25年度厚生労働科学研究費補助金(地域医療基盤開発推進研究事業)「医療放射線防護に関する研究」(H24-医療-一般-017)(研究代表者:細野 眞)で報告されている値を用いた。なお、実効線量透過率の値が示されてないものは、この報告書の値を基に補間法により算出した値を用いた。
3.参考資料
1)診療用放射性同位元素使用施設における濃度限度等に関する基準の適合性に係る算定評価の書面(作成例)
2)当該算定評価の書面に用いる作表(作成例)
3)放射性ラジウム(223R)の漏えい線量に係る遮へい体の透過率について(別表1、2)
4)RI内用療法核種に適用する排水濃度算定に係る使用回数と補正係数について(別表3)
4.遵守事項について
このガイドラインの趣旨を適用して算定評価した病院等においては、当該RI内用療法の適用核種の使用に当たって届出された条件を遵守するものとし、使用状況を記録に残し、放射線の安全管理に努めるものとすること。
付記:上記参考資料はファイルが多岐にわたることに加え、現状(平成27年9月)ではこのガイドラインが厚労省通知に取り込まれた段階になく、このガイドラインに沿った運用は開始されていませんので、本HP掲載の資料には含めておりません。今後の動向に注視していただければ幸いに存じます。(日本核医学会内用療法戦略会議)