Abstract | (206-211)今回の学会では放射性薬品という名前のセッションはこの一つのみであり, ここでは, 放射性薬品研究の中で化学的検討が主な演題を中心に集められていた. 他の放射性医薬品に関する演題はそれぞれ関連する臓器の部会に分類されていた. 206席は, これまで同グループが行ってきた中性でコンパクトなTc錯体に関する検討の一環として, 従来のPETS骨格にあるイミン部位をより空間的に自由度の高いアミン部位に変えることにより, 安定な錯体を短時間で合成できることを示した. 今後のTc錯体のデザインに有用や知見を与えると期待される. 207席はアルブミンを還元して-S-S-基を-SH基としたメルカブトアルブミンを調製し, このSH基を通してTcを結合しようとするものであり, 高分子化合物のSH基のTc結合に関する知見が得られるとともにタンパク標識のあたらしい方向としても注目される. 208席はTc-アルキルヒドロキサムアミド錯体について, 鎖長と脂溶性を中心に体内分布との関連性を追求しようとするものであったが, 化学構造に関する面からの検討に基づく考察も含めて今後の検討が期待される. 209席は99mTcが崩壊して生成する99mTcの自然環境下での挙動に関する報告であったが, 99mTc-化合物を投与後体内から排泄された場合あるいは99mTc化合物をそのまま放置した場合にも生成した99mTc-は酸化されてTcO4として存在していることが示された. 環境への影響という面から今後の検討がさらに望まれる. 210席はTc(V)-DMSの癌集積について, 同じTc(V)錯体であるTc-グルコヘブタネートとDMSとの反応を試み, Tcの状態がその生成した錯体の体内分布におおきく影響することを見いだした. 211席は中性子捕捉治療に用いられるフェニルアラニンのボロン化合物を18-Fで標識し, その癌集積性を検討した報告であった. この化合物は高い癌集積性を示すとともに, 代謝的にも安定であることから, 癌イメージング剤としてのみならず, 中性子捕捉治療時のボロン化合物の集積状態を定量的に把握するにも有用であると考えられ, 今後の応用性が期待される. |