Abstract | まず老年医学の立場から折茂は老化の概念および特徴を明解に解説し, 生理的老化と病的老化の混在する老年者において, 病的老化の予防の重要性を強調した. 同じく老年医学の立場から北は虚血性心疾患の原因である粥状動脈硬化に焦点を当て, LDLの血管壁への沈着を画像化するトレーサ法の臨床応用の可能性を示した. 井上はドーパミンD2レセプターの加齢に伴う減少を, 11C-N-メチルスピペロンによるPETにより証明し, レセプターイメージングの先端的研究成果を呈示した. 同じくPETを用いて, 局所脳血流量, 酸素・ブドウ糖代謝を測定した水川は, 心身ともに健康な老人では循環代謝が健康成人と差のないことを示した. 一方, 小西はECGゲート心プールシンチグラフィにより測定した, 老人の左心機能とその運動負荷に対する反応性について豊富なデータを呈示した. 木谷は老年生理学の立場から老年者の肝機能の変化を論じ, 13C, 14C呼気テストによる肝薬物代謝能評価の有用性を示した. 福永は骨塩定量の結果と血中PTH, カルシトニン, 1,25 (OH)2D濃度との関連を示し, 老人性骨粗鬆症の原因に言及した. 水沼は女性の老化の特徴が卵巣の老化に起因することを論じ, 各種ホルモンのRIA, 骨塩定量など核医学技術が老化の評価や治療効果判定に有用であることを示した. 名和田は下垂体 - 副腎皮質 - 性腺系の各種ホルモンのRIAによる測定結果より, 男性の老化の特徴を示し, 個体差の大きいことを強調した. また標的臓器レセプター機能の加齢による低下も老化に関与するとした. 老化現象の究明と老化の制御に強い関心が寄せられている今日, 老人医学と核医学の専門家が集まり討論したことは意義深い. 老化という現代の大きなトピックスに対して核医学が果たしうる役割が明示され, 今後の発展の可能性に光を当てることができたと考える. |