Abstract | 最近開発された腫瘍マーカーについて, 腫瘍特異性と臓器特異性についての評価とこれらのcombination assayによる臨床的有用性が討論された. 神奈木氏 (京大) は, MoAbが認識する糖鎖抗原I型 (CA19-9, CA50, SPAN-1, KMO-1, ST-439) およびII型 (SLX, CSLEX) についての臓器特異性と, 臨床的有用性を発表した. 濱津氏 (滋賀医大) は, CA72-4が腸癌および胃癌で高率な陽性率を示すこと, およびこのMoAbの認識する抗原が血中の高分子ムチン様物質であると報告した. 大柳氏 (神戸大) は, KMO-1のMoAbも高分子ムチンを認識すること, また, 消化器癌で陽性率が高く, CA19-9やCA50と認識糖鎖構造が異なるので, これらのcombination assayは有用であると報告した. 藤山氏 (熊大) は, PIVKA-IIが肝細胞癌の特異的マーカーであること, ビタミンK投与によって低下することがあるので, 判定にはビタミンK投与の有無を加味すべきと報告した. また, AFPとの相関がなく, 両者のcombination assayが肝癌の診断に有用であると報告した. 松原氏 (京都桂病院) は, CEA, SCC, NSE, SLXについて, 肺癌マーカーとしての特異性と有用性を報告した. 大石氏 (慈恵医大) は, 前立腺癌マーカーとしてのPA, PAP, γ-SMの特異性と, combination assay法による診断率の向上を報告した. 野沢氏 (慶應大) は, 婦人科系のマーカー, SCC, hCG, CA12-5の臨床的有用性の限界を述べられ, 新しいマーカーCA54/61はムチン性癌での陽性率が高く, CA12-5とのcombination assayが卵巣癌マーカーとして有用であると報告した. 阪原氏 (京大) は, CA12-5と同一分子上の類似のエピトープを認識するCA130を用いて卵巣癌マーカーとしての有用性を報告した. 漿液性嚢胞腺癌での陽性率がこの両者とも高いこと, また, 肺癌マーカーとしての有用性も報告した. 大倉氏 (国立がんセンター) は, 現在のマーカーでは早期癌の発見は難しいこと, また, 偽陽性が多いと報告された. 各マーカーの特異性と感度を考慮し, 臓器異性マーカー (肝ではAFP, CEA, CA19-9, PIVKA, 肺ではSCC, CEA, SLX, NSEなど) を組み合わせることで判定精度が向上できると報告した. 最近, マーカー測定法は, MoAbを用いて感度と精度のよい測定が可能となり, マーカーの測定法と臨床的有用性が討論された. |