Abstract | 1988年のアジアオセアニア核医学会の会長である葉先生の講演は東アジアに多い肝内結石の核医学診断に関するものであった. 原因はまだよく分かっていないが, 細菌感染が原因と思われているこの肝内結石は重症例ではショック様症状を呈し, 外科的に減圧術を直ちに施さないとしばしば死に至る疾患で, その早期の正確な診断は大切である. しかしビリルビンが主成分であるこのX線透過性の肝内胆石では, X線単純撮影では何の情報も得られないし, 胆管造影検査でも急性期には肝機能低下のために造影されない. 経皮胆管造影や内視鏡的胆管造影検査は, 良い情報は得られるが侵襲的で副作用もかなり大きい. それゆえ簡単で, 診断精度の高い非侵襲的な核医学診断がこの疾患に相応しい. 葉先生の方法の優れているところは次の点にある. 使用した薬剤は99mTc IDAで, 得られた経時的シンチグラムから, 胆汁のうっ滞の程度を知るため左右各葉別に5分, 40分のカウント数を求め40分のものを5分のそれで除しretention ratioを求めると肝内結石を有する側は排泄が悪いためこの価が高くなり, 定量的に胆汁うっ滞状態を知ることができる. ratention ratioの正常値は右葉では57例の集計で0.55±0.17, 左葉では36例を用い0.57±0.18となっている. これが結石のある場合は1.2〜1.3の数値となりP<0.005の小さい有意水準で鑑別できる. またこの5分, 40分像からfunctional imageを作れば局所的なうっ滞の状態も知ることもできhistogramで局所的なretention ratioも知ることができる. ROCで検討してみてもこの定量的診断が優れていることが分かり, 画像だけでは知ることのできない, 数値による機能低下の判定が可能となる. またGaシンチではうっ滞が化膿性炎によるものか結石によるものかの鑑別が膿瘍のあるなしで可能となる. 以上が講演の概要である. |