Abstract | 肝の位置異常 (偏位) のシンチグラム所見は, 肝内限局性病巣やび漫性肝疾患の所見と異って, 診断基準に通則性が乏しく, 誤診をしやすいものの1つである. 肝の偏位をもたらす原因疾患は数多く, それらの究明には通常X線学的諸検査を必要とするが, シンチグラムから肝偏位の端緒を捉えることは, 以後の検査の方針を有利に導く. 今回われわれは, 肝シンチグラフィーにおける肝偏位診断の役割を再認識することを目的とし, 過去の症例を分析してみた. 2, 3の症例を供覧し, その結果について報告する. なお, ここでのべる肝偏位とは, 肝外性疾患によるもののみに限り, 肝内限局性病巣に起因するものは除外した.「対象」昭和47年後半から昭和50年末までの3年半の間に行われた肝シンチグラフィーのうち, データが揃っている792例を全体の分析の対象とした. このうちの30例が肝偏位を主たる所見としていた. この期間の肝シンチグラフィーは, 東芝製, NaI結晶5×2インチのスキャナー (焦点距離11 cm, 85孔ハネコーン型コリメータ装着) を使用, 前面像と, 右側面像または後面像を原則とし, 必要に応じて他の方向を追加した. |