Abstract | B12の吸収試験は内因子活性検定および悪性貧血の診断の目的に早くから試みられていたが, 60Co-B12ができてからはじめて定量的になった. 次いで58Co, 56Co, 最近では57Co標識B12が作られているが, γ計測効率, 半減期, 比放射能, 放射線障害の点で57Coがもっとも使いよい. 演者は入手の関係でメルク製60Coと57Co標識B12を用いて行なったB12の腸管吸収測定の基礎的実験についてのべ, B12の吸収機序の特殊性についても言及した. 「1. 計測法」 60Co, 57Coのγ線計測は島津のスペクトロメーターと井戸型検出器を用い, OH-B12-57CoやDBC-57CoなどとCN-B12-60Coの比較の目的にdouble tracerを行なったが, その場合57Co計測時60Coを完全に除けないので, 前者を相対的に多く用い, 60Coに対する補正を行なうことにより誤差を最少限に留めることができる. 液量の大きい尿, 便は濃縮, 灰化を省いて直接測定し, また患者投与量を最少限にするために100ccかそれ以上を瓶に入れて測るのがよく, その条件を検討した. 「2. 吸収測定法」 ヒトではSchillingの尿中排泄法, Heinle便中排泄法血清(漿)測定法(Doscherholmen)がよい. それぞれの方法の利点, 欠点, 各測定法相互の関係, Schilling法のFlushの条件, 再現性, 正常値の範囲などについて検討, 負荷量を増したときの吸収率は減少するが絶対吸収量は増えることなどについてのべた. 「3. 吸収機序の特性」 吸収機序研究のためのラットの腸管ループ法(Okuda1960)についてのべ, B12の生理的吸収以外に内因子の関与しない物理的非生理的吸収があること, ヒトの腸管に直接または経腸ゾンデ的に注入した57Co-B12が吸収されること, またその吸収がEDTAにより阻害され, 吸収と2価金属イオンが関係あること, 腸管に胃から下降した内因子活性が存在すること, 小腸の吸収部位は中央部以下, 主に回腸であること, 大腸では生理的吸収はないが大量のB12は吸収されることなどについてのべた. |