生物医学研究志願者の放射線防護に関する提言

 日本核医学会 放射線防護委員会

 臨床研究において、研究志願者を対象として、放射性物質の投与を含む放射線が利用されている。臨床研究の安全な運用と推進に放射線を活用するためには、研究志願者の被ばくに関する放射線防護体制が整備されてなければならない。
 日本核医学会放射線防護委員会は、わが国の国内状況に配慮した上で、放射線防護の観点に基づいた以下の内容を提言する。医学・医療及び放射線防護の専門家と行政担当者が、本提言に添った実施体制を、協力、協調して整備することで、我が国の生命科学及び核医学の発展に寄与できると期待している。なお、この提言は基本的な事項を示したもので、具体的な運用については臨床研究毎に実施マニュアル等を定めること。

1.提言の対象となる研究

 提言の対象は、放射性物質の投与を含む放射線利用を伴う人を対象とする生物医学研究の全てである。
現在の臨床研究は、その範囲が広範となっている。治験に加え、臨
床試験や患者を対象とした臨床研究なども本提言の対象である。

2.倫理

 全ての研究において、世界医師会のヘルシンキ宣言が掲げる諸規定、CIOMS(国際医科学機構協議会)やWHO の人を対象とする生物医学研究に関する倫理指針、厚生労働省倫理指針及び、研究実施機関が存在する地方の法規に合致していることを、倫理委員会が審査する。

3.志願者参加条件

 研究内容と研究参加による危険性について理解できること。

A. 健常志願者を対象とする研究においては、参加者の年齢や過去
の参加履歴を考慮すること。
妊婦や小児を放射線を利用する臨床研究の対象とすることは真に必要な場合を除き避けるべきであるが、どうしても必要な場合は正当性を倫理委員会で充分に検討すること。

B. 患者志願者を対象とする場合は、参加者個人への直接的または間接的利益が見込まれる研究手法に限定すること。

4.被ばく線量管理

A. 健常志願者を対象とする研究においては、予測される医学への貢献の度合いも含めて、防護の最適化に充分配慮すること。

B. 患者志願者を対象として新規放射性医薬品を検査・治療目的で投与する場合は、事前に動物実験やファントム実験等で至適投与量を検討すること。また、PET・CT やSPECT・CT で、診断レベルのCT 画像が必要な場合は、CT の線量も慎重に考慮する。
患者志願者を対象とする研究のうち、核医学検査が主たる研究目的ではないが、新しい他の検査法との精度比較や、治療薬の効果判定に利用する場合は、線量管理に加えて、具体的な放射線検査の件数や頻度を限定する必要がある。

5.志願者への説明・同意

 臨床研究参加者への通常の説明の他に、健常志願者の放射線被ばくが直接の利益につながらないことを充分に理解させること。また、全ての志願者に対して、放射線被ばくのリスクを理解できるように説明し同意を得ること。

6.研究担当者の被ばく管理

 研究に関与する全てのスタッフの放射線被ばくを可能な限り低減する方策を講じること。また、個々の研究の実施に伴う被ばく線量とそのリスクについて説明すること。

7.研究担当者への教育

 研究担当者に対して、放射線の生物学的影響、放射線の安全利用に関する、個々の研究に応じた放射線教育を実施すること。

8.倫理委員会

 適切な助言が可能な、医療放射線防護の知識を有する者が委員会に参加しているか、助言可能な第三者組織との連携を取っていること。
通常の審査項目の他に、被ばく低減への考慮、被ばくのリスクの志願者への説明、放射線を使わない代替方法の検討結果、品質保証計画について充分に検討すること。

平成 23 年10 月26 日

 

追記

 日本核医学会放射線防護委員会と日本アイソトープ協会医学・薬学部会医療放射線管理専門委員会は、平成21 年10 月より、生物医学研究志願者の被ばくに関して合同で検討を行い、放射性物質の投与を含む臨床研究を実施している施設を対象に、研究志願者の放射線被ばくに関する対応や考え方を把握することを目的としてアンケート調査を実施した(「核医学診療施設における研究ボランティアの放射線被ばくの現状と今後の課題―RI を投与する臨床研究または治験を受けるボランティアの被ばくに関するアンケート調査報告― 」,
RADIOISOTOPES, Vol.59, No.11(2010))。また、国内外の文献等の情報収集を行い、それらを踏まえて、本提言(案)の検討が行われた。

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