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市民の皆様へ・プレスの皆様へ

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甲状腺疾患をお持ちの患者さんへ

本文書は汚染、被ばく等の状況が変化したため 2011/6/1にホーム ページのアーカイブに移動しました。文書内では事故当時の数値が用いられていますが、現状では大きく変化しており2011/6/1現在の状況とは大幅に異 なっていますので取り扱いには十分ご注意ください。
甲状腺はヨウ素と密接な関係にある臓器ですので、福島第一原発事故による放射性ヨウ素汚染とご自分の病気との関連についてご心配されておられることと思います。病気別にまとめてみました。現在報道されている飲料水などの環境中の放射性物質量では、いずれの甲状腺疾患でも病状には影響ありません。
Q1.バセドウ病です。健康な人に比べ悪影響が出やすいことはないでしょうか?
A1.ご心配の必要はありません。
バセドウ病をお持ちであっても、同じと考えていただいて大丈夫です。確かに、バセドウ病で、ホルモン値がうまくコントロールできていないような時期には、摂取率(ヨウ素の取り込み率)が病気のない方に比べ高くなります。正常は10-40%、バセドウ病でうまくコントロールできていない場合には平均的には60-70%ほどです。逆に抗甲状腺剤を内服しておられる方では、甲状腺へのヨウ素の取り込みが低下していることもあります。この値は、ヨウ素制限をして検査をした時のものです。したがって、普通の食事(海草類や昆布だしなどをふくむもの)を摂っている場合には、これよりもずっと低い値になります。
私たちは、環境中に出た放射性物質の住民の皆さんへの影響を試算しましたが、現状で原発から離れたところ(政府の発表している30km圏外)にお住まいの方々では、仮にバセドウ病で摂取率が高い状態でも、影響が出るような値にはなりません。
Q2.バセドウ病でアイソトープ治療を受け、現在ホルモン補充を受けています。注意すべき事はあるでしょうか?
A2.ご心配の必要はありません。
アイソトープ治療後にホルモン補充を受けておられる方は、甲状腺へのヨウ素の取り込みはほとんどなくなっています。したがって、体に放射性ヨウ素が入ったとしても、正常な人たちよりも、むしろ早く尿中に排泄されます。
Q3.慢性甲状腺炎です。特に薬などは内服していませんが、放射性ヨウ素が体に入ると症状に繋がらないかと心配です。
A3.ご心配の必要はありません。
 慢性甲状腺炎で、内服の必要がない方の放射性ヨウ素の取り込みは、正常の人たちと全く同じと考えても差し支えありません。ですから、放射性ヨウ素がわずかに体内に入ったとしても、A1の答えと同じです。
Q4.慢性甲状腺炎が原因で甲状腺機能低下症になっており、甲状腺ホルモン補充を受けています。現在の状態は、ホルモンの量などに影響が出るのではないかと心配です。
A4.ご心配の必要はありません。
 ホルモンを内服している方では、甲状腺へのヨウ素摂取率は多くの場合低下していると考えられます。したがって、甲状腺の放射線量はより少なくなるはずです。影響はありません。
Q5.甲状腺機能低下症ですが、治療薬チラーヂンが震災のために手に入りません。健康な人に比べ悪影響はでないでしょうか?
A5.ご心配の必要はありません。もう少しお待ちください。
 あすか製薬は甲状腺機能低下症治療薬チラーヂン(一般名レボチロキシン)で98%のシェアを持っていますが、今回の震災でいわき工場(福島県)が被災し操業停止になりました。手に入りにくい場合、甲状腺機能低下症の症状が起こります。主治医や身近な医療関係者に相談してください。
 甲状腺機能低下症ではチラーヂンを服用できないと甲状腺刺激ホルモンが増加し、甲状腺へのヨウ素摂取を亢進させる可能性があります。しかし、一般に無治療の甲状腺機能低下症でも、A1に示したような活動性バセドウ病を超えるほどの強い集積亢進を示すことはありません。健康な人に比べ、環境中の放射線から悪影響が出やすいということはありません。
 また、平成23年3月25日付けのあすか製薬の発表では生産を再開したとの報道がありました。もう少しお待ちください。
Q6.甲状腺に腫瘍があるといわれています。悪影響はでないでしょうか?
A6.ご心配の必要はありません。
腫瘍があるからといって、放射線量が多くなることはありません。また、わずかな放射線があたったからといって腫瘍が大きくなることはありません。
参考)プランマー病という頻度の少ない病気(バセドウ病のように甲状腺機能亢進症を起こします)では、腺腫という良性の腫瘍が甲状腺ホルモンを作ります。この場合は、この腺腫に少し多めに放射性ヨウ素が取り込まれますが、それが原因でがんに変わることはあり得ません。
このように、いずれの甲状腺疾患でもとくに大きな問題にはなりません。ご安心なさって、治療を続けてください。

 

平成23年3月30日

改訂第2稿:平成23年3月30日

改訂第3稿:平成23年3月30日

日本核医学会