東海村の臨界事故に関して(日本核医学会声明)

平成12年1月17日

日本核医学会会長  福地 稔
日本核医学会理事長 小西淳二

 周知の如く、平成11年9月30日、茨城県東海村の核燃料加工施設JCOにおいて発生した臨界事故により、3名の方が大量の中性子を被ばくし、その中の2名は重症(うち1名は同年12月に死亡)に陥っている。このような事態に際して、日本核医学会としてどのように対処すべきかを検討してみた。
 先ず、1)核医学の日常診療において、東海村の臨界事故で生じたような規模の被ばく事故が起こり得るか否か、2)今回の事故から学ぶべき教訓は何か、さらに3)核医学診療にどのような影響を及ぼすかの点について検討してみた。

核医学診療では、核燃料物質を使用しないこと、また使用する放射性医薬品は、すべてが短半減期核種であり、しかも使用放射能量も極く少ないために、東海村で生じたような規模の被ばく事故は、核医学診療では起こり得ないというのが結論である。
しかし程度の差はあれ事故は起こりうるというのが、今回の臨界事故から得られた教訓である。したがって、放射性同位元素を利用した医療における放射線防護および安全管理に、これまで以上の関心を寄せ、注意を払うことが本学会の果たすべき最重要課題と思われる。また幸いにして、今回の事故では放射性同位元素の放出がごく僅かであったが、日常的に放射性医薬品を取り扱う核医学診療従事者は、放射性同位元素による汚染事故対策についても、専門家として適切に対処できるように、常に心がけておかなければならない(安全管理の徹底、放射線被ばくに関する専門家としての素養、訓練)。
東海村で生じた臨界事故は核燃料物質の誤った取り扱いによって生じた被ばくであり、核医学診療とは本質的に異なる。しかし、核医学は放射性同位元素を使用して診療を行っていることから、放射線被ばくの点で国民に誤解および不安を与え、核医学診療に支障を来すことが危惧される。もし、誤った知識あるいは正しい情報不足のために、国民の間に被ばくに対する根拠のない不安があるとすれば、それを解消するために日頃から努力することも我々に課せられた責務であろう(知識の共有)。
 核医学診療では国内外において過去に、調整が不適切な放射性医薬品の使用や、放射性医薬品の取り違えによる無用の放射線被ばく例がある。これらの事例は、不注意や確認ミスによる人為的なものが多いが、人為的要因を防げなかったシステムの欠陥によることもある。この機会にシステムの再点検を行なう必要がある。
以前より日本核医学会は、毎年開催される総会、各地方毎の地方会、学会主催の講習会、および各種地域広報活動を通じて、核医学診療技術の向上を図るばかりでなく、放射線防護および安全管理に努めてきた。さらに、本学会認定の認定医制度を発足(昨年まで計7回の認定医試験を実施)させ、認定医が常勤して診療に従事している施設を修練機関または教育機関として認可して、核医学認定医主導による核医学診療の普及を推進することにより、医学の発展に寄与し、国民の健康福祉の向上に貢献すべく努めてきた。また平成12年11月兵庫医科大学・福地稔会長主催のもとで開催される第40回日本核医学会総会では、科学技術庁放射線医学総合研究所・佐々木康人所長(前日本核医学会理事長)による「JCO臨界事故の医療を担当して」(仮題)の特別講演を予定し、核医学会員に対して、放射線防護および安全管理をより一層推進してもらうとともに、これまで十分とは云えなかった放射線被ばく医療への関心をもより高めてもらうことを企画している。
 以上、日本核医学会は、今回の東海村の臨界事故の教訓を踏まえ、従来にも増して放射性同位元素を利用した医療における放射線防護および安全管理に万全を尽くすとともに、日本医学放射線学会などの関連機関と相協力して、放射線被ばく医療にも関心を高めていく所存である。

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