放射線に関する用語の解説

福島原子力発電所事故に関する情報では、放射線に関係する専門用語が多数出てきます。ここでは、放射線について、あまりご存じでない方を対象として、できるだけ分かり易く用語の解説をしています。

 

同位体
■同位体とは元素の陽子数が同じで中性子数が異なるものをいいます。
・ 元素は原子核と電子から構成されています。また、原子核は陽子と中性子から構成されています。元素の性質は陽子の数で決まります。元素のなかには、陽子の数が同じであるため同じ元素でありながら、中性子の数が異なるものが存在します。これらを同位体とよびます。例えば、ヨウ素は53個の陽子を持っていますが、中性子を5591個まで持つ37種類の同位体があります。
放射性同位体
■放射性同位体とは放射線を出す同位体のことです
・ 同位体のうち、時間とともに原子核の中の陽子と中性子の数が変化するものがあります。これらは変化の際に放射線を放出しますので、放射性同位体(または放射性同位元素)とよばれます。
・ 原子力発電所事故では、ウランの核分裂反応によって生じる131I (ヨウ素-131)137Cs (セシウム-137)などの放射性同位体に注意を払う必要があります。
放射能
■放射性同位体が放射線を出す能力の大小を放射能と言います。
・ 単位はBqとなります。放射能を持つ物質から、放射線が周囲に放射されます。
Bq
■放射線源の強さ、いわゆる放射能を表わす単位で、「ベクレル」と呼びます
・ 1秒当りに平均1個の壊変が起こる放射線源の強さは1 Bqとなります。1個の原子が壊変すると、1本ないし数本(原子の種類により異なります)の放射線が出るので、Bqが大きくなるほど、その放射線源は強くなります。
・ 身近のもので例えますと、電球が出す光の強さ、あるいはバッティングセンターで、1ゲーム当たりどれくらいの数のボールが出てくるかが放射線源でのBqに相当します。
放射線
    不安定な原子核が壊変して、安定な状態に移る際に放出される粒子や電磁波のことです。
正確には、電離放射線といいます。非電離放射線もありますが、これには、人体への影響はありませんから、ここでは考えません。
・ 放射線には、放射線発生装置から放射されるものと、放射能を持つ物質から放射されるものとの2種類あります。
・ エックス線、アルファ線、ベータ線、ガンマ線、中性子線などの種類があります。
放射線が体に当ることで大小の影響が発生しますが、その程度はSv(シーベルト)を単位として測定します。
放射化
■ 放射線を受けることで、放射性でない元素が放射性同位元素になることをいいます。
・ 今回の原子力発電所事故で発生した放射線の程度では、その照射を受けた生体内の元素が放射化されて、二次的に放射能を帯びることはありません。
吸収線量
■放射線が照射されることで物体が受けたエネルギーのことで、単位はGyです。
Gy
■放射線が生体に与えるエネルギーの大きさを表わす単位で、「グレイ」と呼びます。
・ 放射線源が発した放射線が生体に当ることで、体にエネルギーを与えます。これが、人体への影響の原因となります。このとき放射線から受けたエネルギーの大小を測るためにGyを使用します。1 Gyとは、放射線によって1 kg当りに1 J (ジュール)のエネルギーが与えられた状態を指し、人体に対してどれくらいの強さで当たるかを示します。
放射線のエネルギー
■同じベータ線やガンマ線でも、放射性同位元素の種類によりエネルギーが異なります。
放射線のエネルギーによって透過力が異なります。
身近のもので例えれば、放射線のエネルギーは、バッティングセンターで飛び出してくるボールのスピード(150 km/h110 km/hなど)に相当します。
Sv
■ 放射線が人体に及ぼす影響を表わす単位で、「シーベルト」と読みます
・ 被ばくの影響を考える場合は、Svの大小を見ることになります。放射線が人体に吸収されることによって影響が発生しますが、その大きさは放射線の種類によって異なります。
・ ベータ線やガンマ線では、1 Gy1 Svになりますが、アルファ線では1 Gy20 Svとなり、アルファ線の方が人体に与える影響が大きいということになります。従って、シーベルトは、放射線を受ける側からみて、どのような影響を被るのかを示します。
・ バッティングセンターの例では、体に当たったらどれだけ痛いか(軟球のボールなら速いほうが痛いし、同じ速さなら軟球より硬球の方が痛い)ことに相当します。
Sv/h
■1時間当りの等価線量のことで、1時間当りに人体が放射線から受ける影響を示します。
・ hは時間(hour)を指します。放射線が1 µSv/hあるとは、その場所に1時間留まった場合に、1 µSv/h × 1時間 = 1 µSvの影響を放射線から受けるということを意味しています。
・ その場所に1日いた場合には、1 µSv × 24時間 = 24 µSvを被ばくすることになります。被ばくの影響を考える場合には、人体が受けた等価線量を考えるので、Sv/hを使用する場合には、これに時間を掛ける必要があります。
等価線量
    人体が放射線から受けた影響を表し単位はSvです
放射線の影響は、放射線により人体に与えられるエネルギーに、放射線の種類を考慮した係数(放射線荷重係数)をかけて求めます。ベータ線やガンマ線の放射線荷重係数は、共に1です。
等価線量=吸収線量x放射線荷重係数
実効線量
    全身があびた放射線の生物学的影響の目安で、単位はSvです。
・放射線の影響は、放射線の種類やエネルギー、人体の組織や臓器によっても異なります。
・ これを考慮した放射線量を実効線量といいます。組織や臓器ごとに「等価線量x組織荷重係数」を計算し、これを合計した線量が実効線量です。組織荷重係数は組織や臓器によって決まった値であり、例えば、生殖腺=0.20、赤色骨髄、結腸、胃、肺=0.12,肝臓や甲状腺=0.05,皮膚=0.01です。
・ 私たちは、宇宙から降り注ぐ放射線(宇宙線)、大地からの放射線、食べ物や私たちの体中のカリウム中に0.01%含まれるカリウム-40由来の放射線、そして大地からしみ出すラドンからの放射線の環境下で生まれ、生涯を過ごします。その結果、1年間に世界平均で2.4 mSvの放射線を受けています。宇宙線は空気による遮へい効果のため、高度の高い地域ほど高くなります。大地からの放射線も地域変動が大きく、インドやブラジルには日本の平均値よりも一桁大きい場所もあります。そのため、年間の放射線量は地域によるバラツキが多く、概ね1 〜10 mSvの範囲となります。
実効線量係数
■ 体内に取り込まれた放射線量(Bq)を被ばく線量(Sv)に換算する係数で単位はSv/Bqです。
国際放射線防護委員会(ICRP)では、各の放射性同位元素について、経口または吸入した場合の実効線量係数を勧告しています。131Iの経口摂取での係数は2.2x 10-8、吸入摂取での係数は7.4 x 10-9です。例えば、131Iの100 Bqを経口摂取した場合は2.2 x 10-8x 100 = 2.2 x 10-6 [Sv] = 2.2 µSvとなります。
外部被ばくと内部被ばく
■体の外から放射線を受ける形式を外部被ばくといい、Svで表します
・ 外部被ばくを減らすためには、距離と遮蔽と時間が大切です。
・ 放射線の強さは距離の二乗に反比例しますので、放射線源から離れることで被ばくを軽減できます。
・ 放射線源との間に適切な遮蔽材を置くことも、放射線の低減に有効です。
・ 放射線源の近くで作業を行う必要がある場合には、作業時間をできる限り短くすることが必要です。
内部被ばくとは、飲食や吸入など何らかの原因で放射性物質が体内に取り込まれ、体内の臓器が放射線の照射を受ける形式のことで、この場合もSvで表します。
・ 同じBqの放射線を受けた場合でも体に対する影響は大きく異なります。内部被ばくの評価には、放射性同位元素の半減期や体内での動きや体内から排泄される経路などを考慮する必要があります。
半減期
(物理学的半減期)
■放射線の量が半分になる時間を(物理的)半減期とよびます。
・ 放射性同位体の原子核は、時間の経過と共に変化して別の原子核へと変化していきますが、その速度は放射性同位体の種類によって異なります。そこで、全体の半数の原子核が変化するのに必要な時間、すなわち、放射線の量が半分になるまでの時間を用いて、その速度を表現しており、これを物理学的半減期、あるいは単に半減期といいます。
・ 131Iでは半減期は約8日ですので、8日で1/216日で1/4と、時間と共に放射性同位体であるヨウ素の量は減少していきます。
・ なお、放射線は原子核での核反応の結果ですので、半減期は圧力や温度といった周辺の条件で変化することのない物理学的な定数です。
生理学的(生物学的)半減期
■体内に取り込まれた物質が排泄される速さを生物学的半減期で表します。
・ 体内に取り込まれた物質は体外に排泄されますが、放射性物質も同様です。その速度を表現するために、体内に取り込まれた物質の半分が体外に排泄されるのに必要となる時間を生理学的(生物学的)半減期とよびます。多くの物質は、取り込まれた初期は速やかに減少し、その後ゆっくり減少する二相性を示します。
実効(有効)半減期
■体の中から実際に放射性物質が減る速さが実効半減期です。
・ 体内に入った放射性物質は、物理的な減衰(物理的半減期)と生理学的な減衰(生物学的半減期)の双方によって消えていきます。この双方を合せた減衰の速度を表わすものを実効(有効)半減期といい、これは、物理的及び生理学的な要因によって体内の放射性物質の量が半分にまで減るために必要な時間となります。実効半減期をTeとしますと、
              1/Te = 1/Tp + 1/Tb
となります。ここでTp, Tbはそれぞれ物理的半減期、生理学的半減期です。この式から分るように、実際の半減期である実効半減期は、物理学的半減期よりも長くなることはありません。
・ 生体に摂取された131Iは、先ず0.170.26日程度と極めて速い半減期で、その半分程度が尿中へ排泄され、残りの131I6.47.4日の半減期で徐々に尿中へ排泄をされます。正確に体内に残留する放射性物質の量を見積もるには、放射性物質の体内での動き、例えば甲状腺に一時的に留まるといった挙動や、人体へ放射性物質が取り込まれる経路や量を考慮しなければなりません。
m(ミリ)
■各単位の頭に付けることで千分の1を表わします。
・ 例えば1 mSv0.001 Sv1 Sv1000 mSvとなります。
µ(マイクロ)
■各単位の頭に付け、百万分の1を表わします。
・ 例えば1 µSv0.001 mSv1 mSv1000 µSvになります。

 

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